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2019.04.26

縫合糸について

縫合糸について

内科系・外科系という言葉が使われますが、耳鼻咽喉科は立派な外科系です。耳鼻咽喉科・頭頚部外科という名称もあり、耳鼻咽喉科では小手術から大手術まで様々な手術を行います。病院ではいろいろな手術を行いますが診療所やクリニックでは手術をすることはあまり一般的ではありません。当院では日帰り手術をしていますので、手術で使用する縫合糸についてどんなものがあるのか、また当院で使用している縫合糸について説明したいと思います。
外科手術の基本として切開・剥離・縫合といった技術があります。それぞれ手術部位によって使用するメスや手術器具、縫合糸が異なってきます。私も研修医のころは時間のあいているときに絹糸を使って夜な夜な糸結びの練習をしていました。医局にあるパイプ椅子やベッド柵には皆が練習した糸が何本も繋がっていました。「ブラックペアン」のドラマでも糸結びの練習をした椅子が医局に置いてあり、細かい演出しているなと感心したものです。去年は当院で開催したクリニック体験で中高生に糸結びを練習する器械を使って縫合の体験をしていただきました。
縫合糸にはいろんな種類がありますが、先日開催された日帰り手術研究会でも、鼻内で使用する縫合糸はそれぞれの施設で異なることがわかりました。どの種類の糸を使うのかは慣習的な場合もありますが、執刀医の考えや好みが大きく反映していることが多いです。

1. 機能的な分類

1.1 吸収性

その名の通り、吸収されて体内で消失する糸のことです。吸収されるため、抜糸の必要がありません。素材によって吸収されるまでの日数が大きく異なります。長期間かけて吸収される糸は張力が強いですが、短期間で吸収される場合は張力が弱くなります。皮下の縫合など、一定期間のみ創部が閉じていればいい場合に使用します。

1.2 非吸収性

体内で吸収されない糸です。持続的に緊張が必要な部位に使用されます。体内に留置しても問題のない素材が用いられています。美容形成で組織を縫縮する場合や骨や靭帯の組織を縫合する際に使用されます。

2. 素材

2.1 天然

シルク(絹)が主に使用されています。動物の腸から作るカットグットという糸もあります。

2.2 合成

ポリエステル、ポリグリコール、ナイロンでできた糸。現在使用される糸の大半は合成糸です。

3. 構造

3.1 モノフィラメント(単糸)

一本の糸からできています。表面が滑らかなので組織を通過する際がスムーズです。硬くてねじれに弱いことが挙げられます。

3.2 ポリフィラメント(編糸)

いわゆる、より糸です。表面がざらざらしているので縫合する際は組織にひっかかる感じです。軟らかくて緩みにくいことが挙げられます。

4. 針

4.1 形状

まっすぐな直針、やや弯曲している弱弯、半円状の強弯などがあります。

4.2 断面

一般的には断面が丸の丸針、逆三角形の針、内側が尖っている角針が用いられます。組織を通過する際のダメージが少ないように選択します。粘膜には丸針、皮膚には角針が用いられます。
<参考ページ>
http://www.covidien.co.jp/medical/academia/surgical/group

 

これら吸収性の有無、編糸か単糸か、サイズの組み合わせから、その場で最も使いやすいものを選択します。使いやすいというのは組織にとって合っているということもありますが、執刀医が使いやすいという要素も入ります。いろんなメーカーから発売されていますので、もちろん低コストということも選択肢に挙げられます。

 

当院で鼻内に使用している縫合糸

当院で鼻内に使用している縫合糸は4-0PDSII(「よんぜろぴーでぃーえす」とよびます)13mmモノフィラメントになります。

4-0は太さを表現しています。1-0は太く(約0.4mm)、6-0(約0.08mm)や7-0(約0.06mm)はとても細い糸になります。4-0で太さは約0.16mmぐらいでしょうか。13mmは針の大きさになります。鼻内の縫合は粘膜なので丸針を使用しています。ひっかかりを求めてあえてバイクリルを使用する先生もいるようです。モノフィラメントの組織の通過性の良さから私はこれを使用しています。販売元のデータをみてみると、吸収期間が約182~238日はかかるとのこと。そんなに長く縫合しておかなくても良いので実際には術後1~3週間ぐらいで抜糸することが多いですが、気にならない方はあえてなにもせず自然脱落するまで待つこともあります。

外科手術をうけると先生に「縫いました」とだけしか説明をされないと思いますが、縫合糸にもこれだけ種類があり、それぞれの部位で最適なものを選択して縫合されています。興味がありましたら手術をうける際に担当の先生に聞いてみてはいかがでしょうか。外科医は手術に少なからずこだわりをもっています。先生のこだわりを少しは聞けるかもしれません。

ジョンソン&ジョンソンから
https://www.ethicon.jp/products/sutures/index.html

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