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2019.06.16

第68回日本アレルギー学会学術大会(東京国際フォーラム)

アレルギー学会に出席してきました。アレルギー学会は、アレルギーにかかわる科である内科・皮膚科・小児科・耳鼻科・眼科が集まってアレルギー疾患に関してディスカッションする学会です。耳鼻科だけでなく、他科の考えも聞けるので新鮮でとても面白い学会です。アレルギーとは全身の反応ですので、各々の診療科のアレルギーだけではなく、全身を診ることができるように研鑽を積みましょうというのがこの学会の趣旨です。

今回はこの学会に出席して、新しい治療の流れができていると感じました。今まではアレルギー疾患というのは症状によって分類されて治療をしていました。これをフェノタイプに基づく治療と呼ばれます。例えば喘息ならアトピー型か非アトピー型か、小児喘息か成人喘息か、通年性か季節性かなどです。しかしこれだけでは治療の限界があり、治らない患者さんがいます。アレルギーに関する基礎研究が進むことで、タンパク質のレベルでアレルギー疾患の病態が解明されつつあります。この分子病態に基づいた分類をエンドタイプといい、エンドタイプ別に治療をしていこうという流れができています。

 

主には重症喘息や慢性湿疹に対する生物製剤(分子標的薬)の使用ですが、新しい製剤がこの数年登場し、今後も増えていくと思われます。現在ではオマリズマブ(ゾレア)、メポリズマブ(ヌーカラ)、ベンラリズマブ(ファセンラ)、デュピルマブ(デュピクセント)が重症喘息に対して使用されており、その効果や、喘息以外の疾患である好酸球性副鼻腔炎や好酸球性中耳炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎に対しても効果が期待できると報告されています。今回の学会では、エンドタイプに関する研究結果や、それを判別するためのバイオマーカーの研究、そしてどういったエンドタイプに分子標的薬を使用すべきか、その効果はどうだったかなどの演題が私としては目新しいものでした。とても勉強になりました。

 

こういった薬を使用することでステロイドを使用しなくてよくなったり、制限がかかっていた日常生活から解放されたりと、良い面が多々あるのですが、新しい治療が始まったばかりで、いつまで続けないといけないのか、効果がない場合の次の治療はどうするのか、など課題はまだまだあるように思います。現実的に特に問題となるのは値段でしょう。自己負担額は初回5万円、その後毎週2~3万程度がかかってしまうようです。分子標的薬でも治らないことがあるため、クリニックでこの高いコストではなかなか扱えない治療薬ではないかと思っています。今後データーの積み重ねができ、コストが下がり基幹病院からクリニックへと治療が移行できれば患者さんはより恩恵を受けることができるのではと思います。

 

もう一つは舌下免疫療法(SLIT)でしょうか。現在日本ではスギとダニの舌下免疫療法がおこなわれており、長期成績がでてきています。免疫療法の大家である湯田先生は4~5年行った方がよい結果が得られると報告されています。実際当院でも舌下免疫療法を導入し、その効果を確認していますが、中でも小児に対する舌下免疫療法は非常に重要ではないかと考えています。アレルギーによる睡眠障害からの解放、喘息へ移行することを軽減、新たなアレルギーの獲得の回避など、成人とはまた異なった利点を持っているためです。子供にSLITを行うためには保護者の病気に対する理解と協力がとても大事になります。

まだスギとダニの舌下免疫療法を同時にすることは推奨されていませんでしたが、一度におこなうDual SLITの報告もあり、問題なく行うことができるようです。さらにデーターが積み重なって一般的な治療になればよいと心から思います。

こういったアレルギーに関する研究、臨床を行っておられる先生方のおかげで新しい治療がみつかり、医療が進歩しているのだと思います。私もクリニックで日々患者さんと向き合い、何ができるかを考えながら診察していきたいと思います。

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