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2020.07.09

副鼻腔炎(蓄膿症) 手術が痛いと思っている方へ

副鼻腔炎(蓄膿症:ちくのうしょう)は、くさいにおいがするどろどろとした鼻水が出る鼻が詰まる鼻が喉へ流れる頭痛・咳・痰が持続する、といった不快な症状を引き起こします。炎症が長引くと慢性化し、生活に支障がでてきます。耳鼻科に通院してネブライザー治療をし、抗生剤を服用しますが、数か月根気よく治療を続けても治らないことがあり、その際は手術が適応になります。

程度の差はあれ、どの手術も体になんらかの侵襲(しんしゅう)を与えるため、手術が必要といわれると必ず不安になると思います。副鼻腔炎の手術ではありませんが、私も手術を受ける機会があり、とても不安で、神頼みならぬ先生頼みみたいな気持ちになったことがありました。

医療はとても専門性が高く、特に手術に関しては情報収集や知識を得ることが難しく、「よくわからない」ことが不安に繋がるものと考えます。医師の私でも不安だったので医療知識の少ない患者さんはとても不安だろうと思います。手術中に何が行われるのか、術後はどうなるのか、合併症はおこらないのか、きちんと治るのか、など医師から説明を受けても、完全に理解することは困難だろうと思います。我々も手術に関していろいろな質問を聞かれますが、その中でも最も多い質問は痛みに関してです。

今回は副鼻腔手術と痛みに関して解説したいと思います。

手術方法について

副鼻腔炎の手術は、今は内視鏡を用いて行われることがほとんどです。医師によって慣れ・不慣れがあるかもしれませんがある一定の手術を行っている医師がいれば、どの施設でも同じような手術を受けることができると思います。

大きく違うとすれば麻酔の方法でしょう。

麻酔方法について

全身麻酔といって、完全に意識がなくなる方法と、局所麻酔といって、意識は普通で、手術をする場所だけ麻酔をする方法とがあります。全身麻酔のメリットは、意識のない間に手術をしているので痛みや不快感を感じることはありません。また、全身麻酔は麻酔科医が管理をしているために、手術中に何かあっても対処しやすい環境にあります。執刀医は、痛みに関してはあまり注意せずに手術自体に集中できたり、他の医師と相談しながら手術を遂行できることもメリットの一つです。

デメリットは麻酔が全身にかかるために術後のリカバリーに一定の時間を要する事、基礎疾患があれば麻酔のリスクがあがること、麻酔料としての医療費がかかること、そして最近では麻酔で使用される揮発性麻酔薬が温室効果ガスとして大気中に100年以上残存するために地球温暖化の要因の一つとして挙げられることがあります。

局所麻酔の最大のメリットは、術後のリカバリーが早いということですが、他には術中の出血量が少ない、副鼻腔の危険部位(血管、神経、目など)の近くでは痛みがでるために、手術中に危険部位を回避しやすい麻酔料は薬剤料だけでとても安いことなどが挙げられます。デメリットは意識がある状態ですので、不快・不安が強い、痛みを感じることがあるといったところでしょうか。

痛みのコントロールについて

局所麻酔下での痛みのコントロールは、麻酔薬の量と注射をする部位がとても重要になります。副鼻腔手術の通常での手順は、鼻の中に麻酔のついた綿棒や綿花を挿入してしばらく待ちます。その後、鼻の中に直接麻酔薬を注射していきます。

一度麻酔が効いてしまえば手術中に痛みを感じることは、あまりありません。当院で行った局所麻酔下の手術を受けた患者さんのアンケートでは、9割の患者さんは少しは痛みを感じたが自制内と回答されています。では、残りの1割の患者さんはどういった患者さんだったかというと、痛みに敏感な患者さん、好酸球性炎症や歯性の副鼻腔炎など炎症が強い患者さん、そして内反性乳頭腫のような腫瘍疾患の患者さんでした。

私の経験上、皆さんが痛みを感じるポイントとしては、
①麻酔のガーゼを鼻に入れるとき
②局所麻酔薬を鼻にうつとき
③においのルートを開放するとき
④下鼻甲介の骨を移動するとき
に多いように思います。
こういった痛みを感じやすい場面では、直前に患者さんに少し痛みがでるかもしれませんとお伝えするようにしています。

鎮静について

全身麻酔下では完全に意識がなくなっていますが、局所麻酔下では意識がある状態です。意識があると不安・不快を感じることが多く、そのために血圧が変動したり、手術中に動いてしまったりするので、当院では鎮静剤を使用しています。

鎮静剤の使用には各施設で様々な工夫が行われていますが、当院では「ペンタゾシン」「ミタゾラム」「ヒドロキシジン」を使用しています。場合によっては「デクスメデトミジン」を使用することもあります。鎮静がうまく合えば患者さんはほぼ寝ている状態で手術をすることができますが、過度な鎮静は呼吸抑制を引き起こすことがあり、その使用には医師の慣れが必要です。

術後の痛み

鼻・副鼻腔の手術は、手術が終われば程度の差はあれ、鼻に詰め物をします。主な目的は出血を抑えることですが、鼻の中の形を維持する目的でも使われます。手術直後は鼻に麻酔が効いているので痛みを感じることはありませんが、麻酔薬がきれてくると徐々にですが痛みがでてきます。これは全身麻酔でも局所麻酔でも同じことになります。

術後の鼻の痛みに対しては「冷やす」「鎮痛剤を使用する」ことで対処していただきます。術後4~6時間ぐらいが最も痛みがでる時間帯です。手術を受けた皆さんには、「今晩一晩はしんどいですよ」と説明させていただいています。

まとめ

副鼻腔炎の手術の痛みは、麻酔薬の使用方法、鎮静方法によってほとんどは抑えることができます。しかし病状によっては痛みを感じてしまうこともあるため、その場合には全身麻酔下の手術を提示されると思います。また、術後はどうしても痛みがでますので、あらかじめ対処方法をよく聞いておかれるとよいと思います。

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